2013年 05月 13日
著者は、此れまでの通説「マッカーサーによる押しつけ憲法」説に、疑義を呈す。 文庫版まえがきで、「明治の三傑は、西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允と言われる、ならば昭和の三傑は誰か?そんなのいるかい?というなかれ、私なら、戦後処理に当たった鈴木貫太郎、幣原喜重郎、吉田茂の三人を揚げる。中で幣原は、繰り返される「歴代首相の採点録」で、その評価は極めて低い。その名は「軟弱」の同義語として、戦前、戦後を通じて忌み嫌われている。三島(由紀夫)も唾棄した。果たしてそうか。逆ではないのか。幣原が新憲法に挿入した象徴天皇制と戦力放棄は、二つながら戦後日本の機軸となった。...戦力放棄は天皇制存続と引き換えに、占領総督マッカーサーに押し付けられた、....此れが「定説」だが、史料の示すところ、どうやら事情は違う。そこには「狡猾な古狸」の「策」が秘められていた。平たく言えば、幣原はマックをハメたんだ。...憲法九条はいわば「救国のトリック」だった、と当方は見る。しかもこのトリックは「昭和の三傑」の合作だった節がある。」、と書く。 その魔法の杖とも言うべきが、憲法九条第一項の「戦争放棄」と第二項の「戦力放棄」であり、それは幣原喜重郎によって作られ、マッカーサーをも欺いた「救国のトリック」だった、と断ずる。 「第九条は、誰が、何を企図し、どうやって作ったか」、を知ることは、結果として現在の我々が享けている恩恵や、不条理の因って来る所以を考える手だてにもなる。著者も前書きに「戦後史最大の謎に一つの「解」を試みた」と言っている。 為にする憲法擁護論者、貴方任せの一国平和主義者、使い古された戦後民主主義なるを標榜する学者や所謂進歩的文化人、メディア等々、先ずは本書を一読し、改めて憲法とは何か、誰が何の為に作り、誰が、どう守らねばならぬのか、固定概念に基づく短絡的思考を排して、憲法論議再考の一助、切っ掛けに資する一書である。 著者の豊富な知識と経験、広範な渉猟に基ずくストーリー・テリングの面白さ、熱誠溢れる論述で、一挙に読了。近頃白眉の一冊となった。 序でのもう一冊は、「死ぬとき後悔する 25」 緩和医療医 大津秀一著 緩和医療、終末期医療の専門医なる人の、終末期患者(主として“癌”罹病者)の苦痛減、看取りにあたる中での経験に基づく、「死にあたって、後悔しない」ための自らの提言、患者を通じて学んだことなどの25項目。未だまだ、俗欲、妄執抜けやらぬ身には、全てすんなりとは飲み込めませんが。一読の価値有り。
by gettenn66
| 2013-05-13 20:38
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